京都メディアフォーラム例会記録(2004.7~2011.12)

京都メディアフォーラム例会記録

発想法を教える

 ある大学で新入生対象で発想法を教えている。
初年次演習を学部全体で取り組んでいる知り合いから頼まれて講師に加わっている。講師依頼の折りに、先方から筒井独自の教授法ではなく、先方の大学の教授法で教えてもらいたいということがあった。


以前ならばこのお願いには少し戸惑ったことと思う。しかし、科目担当教員が統一した指導をおこなう必要性を痛感している者としては、私自身もこうした経験を積んでおくことが必要だと思ったので、喜んでお引き受けした。毎年新しいことに取り組むことで、自分のスタンスを常に時代に合わせておきたいと思うので、これも今年のチャレンジだと考えている。


授業シラバスは、以下の通りである。

  1. ガイダンス
  2. イデアの拡散(ブレインストーミング1)
  3. イデアの拡散(ブレインストーミング2)
  4. イデアの収束(KJ法の説明)
  5. イデアの収束(KJ法の実習1)
  6. イデアの収束(KJ法の実習2)
  7. 文章の要約とまとめ
  8. 文章のまとめの評価
  9. 対立文と主張
  10. 意見を出す・発表する
  11. 意見を聞き、発言する1
  12. 意見を聞き、発言する2
  13. まとめ


「文章の要約とまとめ」以後は、これまでいつも実践していたので、困らない。しかし、それ以前のアイデアの拡散・収束は、授業としては初めての経験である。かねてから、この部分をどう改善するかを考えていたので、初めてながらも興味が尽きない。


最初に教員が受講生の前でデモを見せて、翌週からクラス内で受講生が実践することになる。教師としての力量は、クラスでの実践の時に明確となる。


ブレインストーミングがうまくいくグループとそうでないグループがあるし、ある時期に行き詰まるグループもある。この時にどういう対応を教員がするのかである。先輩教員にこれについて尋ねると、「ブレインストーミングでは、行き詰まっても教員は何も言わないことがいい」との答えだった。そこで、一度目の実習は不安になりながらもうまくいかなくても放っておいた。翌週二度目のブレインストーミングをおこなうと、受講生は以前よりも発想が出てくるようになった。これを見て、確かに言われた通りだなあと思った。


発想法の授業をおこなう時には、教員はあまり詳しく説明したり助け船をだしたりしないことが重要だ。しかし、それでもクラスによって差が出るのは何が原因なのか?


学生側の原因を除外するとすれば、やはり教員がクラスの雰囲気をどう作るかだろう。学生をリラックスさせ、気楽な雰囲気を作り上げて、彼ら自身が動き出す仕掛けを準備しておくことだと思う。


ありがたいのは、他の教員が互いに協力しながら教育しようという雰囲気があることである。授業後、教員が集まって、次回以後の授業について打合せをするのだが、これが実にスムーズに進んでいく。おかげで初対面の私であっても、質問もしやすいし、他の教員が以前の経験を丁寧に教えてくれるので助かっている。


授業は、かつて教員一人の独占物であった。しかし、そうした弊害が目立ち始めたことで、教員間の連携を進める科目(必修科目が多い)も増えてきた。その渦中に自らがいることが非常な刺激になっている。自分独自の教授法と統一的な教授法の双方ができる経験は、今後に大いに生かせることだと思う。