京都メディアフォーラム例会記録(2004.7~2011.12)

京都メディアフォーラム例会記録

『アカデミック・ジャパニーズの挑戦』出版されました

ytsutsui2006-06-17

アカデミック・ジャパニーズの挑戦

アカデミック・ジャパニーズの挑戦


ここ半年一番力を入れた執筆/編集活動の成果がこの本に結実した。6月大学教育学会直前に完成した。日本語教員の門倉正美さん(男性)と三宅和子さん(女性)と一緒に、私も編者を担当させていただいた。


AMAZONの紹介によると、「「アカデミック・ジャパニーズ(大学での学習に必要な日本語力)」という言葉の誕生から、それをめぐるさまざまな教育の動きと発展を俯瞰し、留学生の日本語教育における実践、「市民の日本語」へと展開する論文集」となる。


実は、「アカデミック・ジャパニーズ」という言葉は、二年前に日本語教員の方とお会いするまで知らなかった。留学生の日本留学試験試験が、文法的な日本語を問うことではなく、問題解決能力を養う日本語の育成へと転換する中で、日本語教育が留学生だけでなく、日本人および市民へと広がりつつある。その最先端の動きをとらえたのが本書である。


この本を読んだ読者から既にいくつかの感想をいただいているが、その中でも一番うれしかったのが日本語専門書店「そうがく社」店主の感想である。

・・・・・・本書は、「AJ(アカデミック・ジャパニーズ)」を主題にした研究書としては初の市販書です。

本書では、
日本留学試験で説明される狭義の「大学で学ぶために必要となる日本語力」の殻を突き破り、日本人学生を対象とした「日本語表現」力、さらには現代市民社会における「コミュニケーション能力」へと、AJ概念を拡大したことにあります。自律した市民社会に必要な「ことばの教育」総体に概念を広げる「挑戦」です。・・・・・(中略)・・・・・・


外国人の日本語教育という狭い分野で商売をしている私にとって、多様性のある社会を生み出す原動力は「外国人」と「日本人」の接触場面という重層的なつながりにあるというのが、これまでの「共通する視座」でした。本書を通して、大学をはじめとした学校と現代市民社会をつなぐ新たな「共通する視座」を得られたことに感激、感謝しています。


最後に、本書はもちろん、本書に関連した「市民の日本語」(ひつじ書房)も必ず読んでくださいね。本書を読まずして何を読む!(といいつつ「ダヴィンチコード」を読んでいる私)
 (「そうがく社通信6月号」から引用)


営業の最前線におられる書店からの好意的な反応はうれしいかぎりだ。版を重ねてほしい本である。


この本の編集過程について少し話したい。私が長く片思いして来た日本語教員と二年前に出会い、研究会での報告、学会シンポのパネリストなどで相互の接点をさぐりながら、本書を作り上げていった過程は面白かった。


編者代表の門倉さんは、哲学者でありながら、留学生や日本語教育に携わっていることで柔軟な発想を身に付けておられるので、編者としてのリーダシップを発揮された。また、もう一人の編者である三宅さんは、雑誌編集者の経験を生かして、綿密に文章校正をされ、原稿の修正する必要がある場合には対案を示してくれるので大変ありがたい存在だった。


執筆者の原稿に対しても、編者の意見を述べさせてもらい、相互の信頼関係の中で、校正作業も計画通り進んだ。10名ほどの執筆者がいるとかなりの遅れが懸念されるのが普通だが、本書の場合には実にスムーズだった。執筆者に対しても敬意を表したい。