京都メディアフォーラム例会記録(2004.7~2011.12)

京都メディアフォーラム例会記録

1月13日(金)講義に対するコメントに答えて

ytsutsui2006-01-17

前回ゲスト講師として講義の半分を担当させて頂きありがとうございました。そして、私が意図した講義の場合、みなさんの協力および参加なしにはまったく進まない形式だったため、あらためて皆さんに感謝を申し上げます。ただ、講義内で作業が完了できなかったことを悔いています。

私の講義に対して、コメントカードに29名の方が感想を寄せてくれました。また、講義後には、私のブログにコメントやトラックバックを書き込んでくれた学生、直接メールを送ってくれた学生が数名いました。ありがとう。

私の言いたいことは、簡単です。

これまでの社会メディア論の講義で、みなさんは十分の知識を得、メディアや社会を解釈することができるようになりました。そうした知的な頭脳を獲得したみなさんがすべきことは、実践に乗り出すことです。幸いにも、みなさんが実践に乗り出すことは、非常に簡単になっています。それはデモでお見せしました。

学者であるわれわれ教員は、必ずしも実践に乗り出さなくても別の形で社会に貢献できることができます。しかし、みなさんは、違います。知識と解釈方法を手に入れたからには、それを実践の中で検証することが必要です。

そのために必要なことがあります。

1.携帯メールだけのつきあいから脱却しよう。

携帯メールは、友達だけとのつきあいです。チャンスを得、大きな仕事は、友達以外からやってきます。みなさんがチャンスを得るためには、PCメール、つまりパソコンを使ったメールが主になり、携帯は従になる習慣が必要です。

2.現状に対する不満を言うよりも、自らが現状を変える方が重要。

講義や大学が面白くない、よくない、という批判の声を上げることは重要です。しかし、それ以上に重要なのは、それを自らが変える努力です。みなさんにとって、自分の努力抜きに、他人を批判することはではありません。自らそれを変えていくことに意味があります。変えようと思えば、きっと変えられます。われわれ教員や大学は、それに対する支援を惜しみません。

3.皆さん自身が思ったことを直接相手に伝えることです。

たとえば、私の講義に対する感想(面白かった、やらせだ)は、コメントカードに書くだけでなく、直接私に感想を伝えるとか、PCメールを送ればもっと効果があります。特に、誉め言葉の場合には、直接伝えてもらうと、私は舞い上がるほど喜びます。講師と受講生との関係は、もっと直接的である方がいい。みなさんの一声が大学や社会を変えることができるのです。忘れないでください。


以下、個別質問に回答します。

Q:ブログやポッドキャスティングのことを知らなかったので、楽しかった。

A:講義では、ポッドキャスティングの制作だけをして、それを発信する仕掛けについて  はまったく扱っていません。それを含めて、以下のサイトを参照下さい。

http://www.voiceblog.jp/

http://www.podcastjuice.jp/

http://podcastnow.net/blog/


Q:音楽がコンピュータで作れるのは驚いた。でも、やはり人の頭で作った方がいいのではないか。

A:この質問は、映画でCGか、実写のどちらがいいのかと同じです。それぞれに長短がありますが、どちらもいいです。ところで、みなさんが聞いて感動している音楽は、コンピュータ処理なしには、商品として流通する高品質の楽曲は作れません。要は、コンピュータ処理を否定するよりも、みなさんの心に響く音楽を作る努力をする方がいいと思います。


Q:ポッドキャスティングが流行すれば、ラジオ局がつぶれるかもしれない。

A:いや、逆です。これなしにはラジオ局はつぶれます。つまり、ラジオ局の放送は、特定時間に流れた放送を聞かなければ聞けません。しかし、ポッドキャスティングの場合、あらかじめダウンロード設定をしておけば、放送時間に聞かなくても、後から聞けます。

しかも、ポッドキャスティングの場合、放送中に楽曲・アーティストサイトに行って、情報を得たり、別の曲を購入することができます。さらに今後は、番組中のCMも流せるようなるでしょう。こういう音声放送のノウハウを一番持っているのは、ラジオ局です。かれらは今一気に乗り出しています。

けれども、ラジオ局がどうなるかよりも大切なのは、われわれ市民・学生が自由に発信できる仕掛けができたということです。ラジオ局や通信企業などが本格的に乗り出すまでに、われわれ市民が先に走り出すことです。へたでもいい、思いっきり冒険して見て、プロよりも先に行きましょう。


Q:ポッドキャスティングによって良質の作品がいっぱいできたらいい。

A:作品を作るのは、あなたです。最初はへたでもいいですが、そのうち向上すればいいのです。あなた自身の実践が求められていますよ。


Q:先生と私たちが一体? って感じがした。「授業はライブだ」が本当にあっていいと思う。

A:この形式は、みなさんの協力なしには成功しません。一方だけが「好きだ」と言っても、他方が「嫌い」ならば恋愛は成立しないでしょう。それと同じ。ライブの授業は、通常の講義と比べて、かなりの事前準備、ノウハウ修得、トラブルに対する瞬時の対処などかなりの手間がかかります。事実、トラブルが起こったので、講義中に編集が完了しなかったのです。こうした準備を担える学生が、残念ながら、この学科の上級生にはほとんどいません。みなさんの中から生まれてくれることなしには広げることは難しいです。


Q:人間は、ネットに入り浸っても、所詮は生き物である。ポッドキャスティングの流行は、生き物であることの感覚の再取得ではないか。

A:その通り。ゲーム、チャット、掲示板では、本来の自分と異なる自分が可能となるが、それだけで生きられるわけではありません。ネットの世界は、架空ではなく、現実世界の人間との対話を求める道具となればいい。


Q:先生は、ブログを試さない人はだめだと言ってたけど、ネットにはまって世界が狭くなる。実際に会わない人と友達になるよりも会うことを大切にしたい。

A:ネットにはまることを危惧するのはよくわかります。でも、はまるならば中途半端なのが一番いけない。最近は、オタク市場が海外にも波及して、その市場の中で生活が可能になっています。ただ、その市場の中でただ消費するのではなく、オタクを喜ば  せるビジネスとか、仕掛けとかを実践して、現実世界との接点を極端に少なくして自らの収入が成り立てばそれも立派な人生です。私は、ネットの世界は、現実世界の人々とのつながりを広げる手段でしかないのですが、そうでない学生も多い。それを嘆くよりも、やるならば徹底的にやれ、そして生きていく可能性を見つけろ、といいたい。


Q:私もブログやポッドキャスティングに興味を持った。やり方を教えてほしい。

A:こういうのは大歓迎です。でも、まずは既に紹介したサイトで勉強しましょう。ある程度試してから、聞きに来てくれるとうれしい。


Q:メディア好きな自分にとって、筒井さんの講義は面白かった。

A:ありがとう。でもねえ、私が言いたいのは、発信者や制作者は、見る人よりもかなりの努力が必要だと言うことです。アニメ、音楽、映画などの作品は、制作にはとても時間がかかります。良質の作品を作るためには、その努力が必要です。Yahooのサイトを制作する側は、絵もカラーもないコマンドだけを操作して、きれいなサイトを作り上げます。私はこうした努力をする制作者にみなさんがなってほしいと思っています。それをわかってください。


Q:筒井さんの講義は、メディアの発信は、現在の自分たちでもできるんだということを教えてくれた。

A:はい、そのとおりです。でも、発信する場合には、より広い人々に、あなたが努力した内容を伝えてください。内輪向けの自己満足ほどつまらないものはありません。


Q:出欠をメールで取ると、セキュリティー(排除)のデータベース化とつながる。

A:この意見の意図がわかりにくいのですが、メールに限らず、ネットにつながることはある意味で自分の情報を相手に伝えていることになります。もちろん、外に出したくない個人情報は流さない工夫が必要ですが、情報がネットに流れれば、データーベースに蓄積されることは避けられないです。みなさんが普段使っている携帯電話や携帯メールも蓄積されていますので、出欠だけを例外視するのはバランスが取れてないと思います。


Q:筒井さんの講義はいつもこんな講義なんでしょうか。

A:いいえ、普段はごく普通の講義です。ライブ講義は、学生やサポート部隊が完璧に支援してくれるならば可能ですが、一人では無理。サポート部隊が不可欠です。


Q:筒井さんがやっていた楽曲の作成が面白そうだ。

A:私は今回の講義のために、始めて楽曲作成ソフトを使っただけで、今でも不得意です。むしろみなさんの方が得意でしょう。

私は、以下の専門家を求めています。学問やイベントのデジタル裏方、デジタル体力派、読書家などが集まれば、時代の先を行くことが可能です。

私は時代を創る人になりたいし、みなさんもそうあってほしい。


以上、コメントしました。ありがとうございました。

私のサイトは、

Web     http://www.kyoto-seika.ac.jp/tsutsui/

Weblog   http://d.hatena.ne.jp/ytsutsui/

Podcasting http://www.voiceblog.jp/tsutsui/

です。