京都メディアフォーラム例会記録(2004.7~2011.12)

京都メディアフォーラム例会記録

世界情報社会サミット(WSIS)と私たち

科研のショックを醒ますためというわけではないが、以前から予定していた出張に出かけた。ショックの効果は出張費に表れる。夜行バスの往復ということになった。

出張の目的は、JCAFEが二ヶ月に一回開催されているサロンに参加することである。今回は代表の浜田さんが報告者となった。テーマは、「世界情報社会サミットの現在」である。2003年12月第一フェースがスイス・ジュネーブで開催されたWSISでは、当初、インターネットのガバナンス(IPアドレスドメインの管理)問題が検討事項であったが、次第にそれ以外のテーマであるサイバーセキュリティー、犯罪、プライバシーなどを先行的に規制しようという方向に変わってきている。この傾向は、911事件以後のテロに対する戦いという基調が大きな影響を与えている。

私はこの会議の重要性を、昨年末出版された会津泉さんの本を読むまで意識しなかった。

しかし、意識しなかったのだが、2003年12月のサミット前の10月東京で開催されたWSISアジアNGO会議直後に開かれたネットワーキング専門家会議で、私も報告させて頂いていることがサロンで配布された資料でわかった。なんとも恥ずかしいことだが、インターネット関係者の関心は実はこうした現状である。

では、このサミットで議論されていることに対する懸念は何なのか。
いくつかあるが、

  1. IPアドレスドメイン管理という技術的な課題だけでなく、その他の問題を先行的に議論して、多くの当事者が知らない間に国際的な規制の枠組みを決定していこうということである。人権やマイノリティーの権利よりも、その権利を規制する枠組みが決められようとしていることである。
  2. ガバナンス問題に関しても、これまで国家の関与を意識的に排除してきた伝統が崩れつつあること。
  3. NGOや市民の発言権が認められない一方で、企業の影響力が肥大化していること。
  4. この会議での決定内容が国内的にどのように関わるのかがわかりにくいこと、

などがある。

特に最後の懸念をどのように市民に伝えるのかは、今後開催される会議に焦点を絞りながら、早急に対応すべきことである。5月16〜17日東京でWSISユビキタス・テーマ別会合が開催されるがそれに参加する海外のNGO関係者を招いたイベントを開催しようということになった。ただ、焦点は、9月(ジュネーブ)、11月(チュニス)で開催されるWSISフェーズ2会議である。これに向けて市民の関心を高めるイベントを開催する準備に取りかかることとなった。この活動も私の研究テーマとなりそうだ。